国立大学の入試は大きく二種類があると言われています。一つ目は現在1月に行われているセンター試験(2020年度以降は大学入学共通テスト)を受験し、それを一次選考として通過したものに大学ごとに行われる学力検査、通常は二次試験と言われるものを受けて合否が決まるという学力重視の選考です。

もう一つは調査書や推薦書、志願理由書などの書類や小論文や作文、面接などによって合否が決定する「AO入試」「推薦入試」と言われる入試です。

このうちの一つ目の入試形態が2020年度以降大きな改革があると発表されましたが、実は大学によってはすでに改革が始まっているのです。ここではその改革の内容を紹介していきたいと思います。

▼目次

総合的な能力が重視される

これまでの入試においてはいわゆる「詰め込み型」の学力が重視されてきました。塾などでもとにかく試験に役立つものを知識として詰め込んで試験に臨んでいたのです。しかし今回の改革に向けては「学力の三要素」をこれまでよりも評価していくという方針が打ち出されています。そのために、ただ単純に知識によって答えを書くだけではなく、その課題に対して必要な知識を
使って自己の考えを理論的にまとめ、その過程と結論を表現する能力が必要とされるようになっているのです。

学力の三要素とは「基礎的・基本的な知識・技能」「知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」を指します。

こうなると今までのようにただ答えを知っているというだけでは素晴らしい答えは出せなくなると言えるでしょう。

そして、この改革は「センター試験」が変わるだけでなく、それぞれの学校で行われる二次試験にも及んでいます。これまでのように学力だけで点数を判断するのではなく、この二次試験にも書類審査や面擦を取り込んでいくようになるのです。

調査書や志願理由書、面接などを導入することで、生徒の学力の一面だけで判断するのではなく、学習意欲や人間性などを総合的に判断できるようになるということです。そしてこれらのことで判断していたAO入試や推薦入試は全体の定員の30%を占めることを目指すという方針も出されています。AO入試などは学力よりも高校でどれだけ真面目に学業に取り組んできたか、その学生の人間性、といったもので判断されます。こういった入試になってくると「詰め込み型の勉強だけをしていれば良い」という時代は終わったと考えられます。

各科目ごとの改革点

まず科目に関しては、現在のセンター試験も私立大学などに利用する際などは3科目受験などが認められていますが、国立大学を受験する場合は5教科7科目を受験することが原則となっています。これは高校で学んだ教科の学習達成度を測るためという目的があり、2020年度以降の「大学入学共通テスト」にも変化はありません。そのために苦手科目がある学生などには厳しいテストになります。

英語について

現在、高校の学習指導要領においても英語は4技能、すなわち「話す」「書く」「聞く」「読む」を総合的に学習していくことが指導されています。そのうえで大学の入試に関しても民間業者の認定試験を活用することが有効であるという判断から、これらの認定試験そのものを大学入学共通テストと同じ位置づけに設定して現在の一般入試、2020年以降は一般選抜の受験生が受験するようにと方針が出されました。ただし、慎重に移行を進めていくために2023年度までは共通テストと併用する形をとって、両方の結果が判定されます。2023年度までは高校三年生の12月までに認定試験を受けて、しかも1月の共通テストも受験するという形になります。これはそれぞれの大学がバラバラに設定していると混乱が予測されることから先に決定したと考えられます。

国語や数学について

現在大きく改革が進んでいる内容は「知識の詰め込み」から「知識を利用しての論理的思考力や表現力」へと変化しているところです。それをうけて国語や数学でも現行のマークシートへの書き込みだけではなく、記述問題が出されることになっています。特に国語の記述問題などは、答えが一つとは限らないような問題も出題される予定です。例えば「原子力発電所が日本に必要か不必要か」という問題に関しては明確な答えはありません。発電のために必要と考える人もいれば、危険なので不必要という人も居ます。つまり、自分が答えたいことに対して、どれだけ理論的に思考して、必要な知識を使い、それを正しい文章に表現できるかという力が求められるのです。

まとめ

こういった改革は2020年度から本格的に始まるとされています。しかし、じゃあまだ2年ほどは今のままだろうというのはあまりにも浅慮です。すでに進学塾や先を考えている高校はそれに向けて学習内容を変えてきています。また、大学も改革を始めているところも出てきています。まだ先のことと考えず、すぐに対処していくことが合格への近道だと言えるでしょう。